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群雲、関ヶ原へ 【岳宏一郎】 [本]

最近、「関ヶ原の戦い」関連の書籍を続けて読んでいます。
読むだけじゃなく、実際に陣跡に行ったりもしちゃってますね~。
なんか、イッパシの関ヶ原フリークです。
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「関ヶ原の戦い」関係で、なんか面白い本がないかなとネットで検索中に、この本を見つけました。
群雲01.JPG
「群雲、関ヶ原へ」 岳宏一郎
上下巻です。
名古屋の本屋さんで、上巻ゲット。
読み出したら、面白かったので、下巻も購入。
と、思ったら、廻った本屋さんには下巻無し。
これじゃ、蛇の生殺しだよ~。
で、今回もAmazonで購入しました。

いつも、ブログで本の紹介するときに、Amazonのリンクを貼っています。
でも実際に自分が買うときは、直接本屋さんで買っているんです。
ボクは、現物を目で見てから、買いたい派なんですよね。
他人にAmazonを勧めておきながら、なんという所業でしょうかね。
しかし、今回みたいに、身近な本屋にない本などは、ネットで買うのは便利ですね。

話が大きく逸れました。


 
 
 
本の感想です。
この本、上下巻合わせて1300ページにも及ぶ大作です。
なぜ上中下巻の3冊に分けないのか疑問ではありますが、それは置いときましょう。

この小説、ほんとおもしろいです。

おもしろい要因は、小説の組み立て方です。
通常の歴史小説であれば、一人の主人公を置いて、物語が進みます。
それに較べて本書は、各章ごとに、主になる人物が入れ替わります。

例えるなら「司馬遼太郎の関ヶ原」を武将ごとにまとめなおした感じです。
「司馬遼太郎の関ヶ原」で描かれたエピソードも、人物ごとに描かれていると、新鮮です。
もちろん、再編集なんていう領域は超えています。
限りある歴史資料をもとに小説を書きますと、自ずと似たようなスジになってしまいます。
そのようなジレンマを、小説の構成を変えることによって、払拭しています。
普通、小説は先に書いたもん勝ちみたいなところがあります。
同じ題材を後から書くと、二番煎じになりかねません。
しかしながら、この「群雲、関ヶ原へ」は「司馬遼太郎の関ヶ原」の二番煎じになるどころか、同じ茶葉から、こういう味も出せるのかという新味を引き出しています。

また「司馬遼太郎の関ヶ原」では描かれていたかどうか印象が薄いマイナー武将も、本作では焦点をあてて紹介しています。
徳永寿昌、田丸直昌、細川幽斎
歴史に詳しい人なら、知っているのかもしれません。
ボクにとっては、あんたさん、どなたさんですかって感じです。
へえ、こんな武将がいたんだ、という感覚です。
これを読み終わると、関ヶ原通になりますよ。

物語の前半は、「徳川家康から見た、各武将の描写」が多いです。
その描かれ方が、本音トークのようで、軽妙です。
例えば、家康から見た上杉景勝の描写です。

人質としてすばやく春日山城に拉致されたという十歳の少年のことが妙に気になった。(中略)
がんばれよ、そう声援をおくってやりたいぐらいだった。(上巻20頁引用)

景勝は西国の二歳上の太守、毛利輝元ともども従三位に進められ、参議に任ぜられた。
「わしに追いついてきたな」
家康は爪を噛みたくなった。(上巻34頁引用)

景勝は急逝した小早川隆景のあとを襲い、大老に挙げられた。
「ついにおいつかれた」
と家康は思った。(上巻38頁引用)

徳川家康の謀臣、本田正信の描写はこのようです。

正信は神の贈り物のような行政官だったが、しかし戦場での駆け引きがうまいのか、下手なのかは、もうひとつはっきりしなかった。
たぶんうまいのだろう、ぐらいに家康は考えていた。(中略)
だが、家康は決してその機会を与えなかった。
行政官が戦士としても有能だったりした日には、戦うことしか芸のない部将たちの立つ瀬がなかった。(上巻284頁引用)

五大老の一人、前田利家も、家康にかかればこんな感じ。

太閤に抜かれたのはまあ仕方がない。
あれは千年に一人出るか出ないかというほどの途方もない人物だった。
だが、前田はたかだか武者あがりではないか。(中略)
家康に云わせれば、「末森城の後巻き」以外、利家に見るべきものがなかった。
その末森の攻防戦にしたところが、中央の覇権とはなんの関係もない佐々成政との局地戦である。(上巻306頁引用)

ねっ、面白いでしょう。

前半は、このような感じで進んでいきます。
もちろん、「石田三成から見た、誰々」という描写もあります。
そして、物語の後半は、各章においての主たる武将が、その武将目線で描かれています。
家康や三成と言ったメジャー級ではなく、マイナー級をおもしろく描いています。
さほどメジャーではない武将が、「西に就こうか、東に就こうか」悩んでいます。
悩む姿も、軽妙です。

京極高次は次のように描かれています。

高次は動乱というやつが無性に好きだった。
乱の匂いをかぎつけると儲け話がごろごろ転がっているような気持ちになり、いつも少しおかしくなった。(中略)
そのくせこの人物は動乱から一度も利益を受け取ったことがなかった。(中略)
高次はさしずめ負け馬に乗る名人とでもいったところだった。
いくら知恵を絞っても結果はつねに同じだった。(下巻436頁引用)

京極高次は、今年大河ドラマ(江 ~姫たちの戦国~)でお江の姉の夫としてテレビに登場していました。
そうでもなければ、戦国時代ファンじゃないと知らないんじゃないかな。

もちろん、かっこいい描写もありますよ。
終盤大谷吉継軍が、寝返った小早川秀秋軍と戦うシーンなど、感涙ものです。

鉄砲隊を併せても千でしかない。
だが、このときも吉継は寡兵を嘆かなかった。
勝敗が数で決まるなら「将」などいらないのである。(下巻588頁引用)

まあ、とにもかくにも、どこから読んでもおもしろい歴史小説。
関ヶ原フリークの人に、お勧めします。
関ヶ原フリークになりたい人にも、お勧めします。

群雲、関ヶ原へ〈上〉 (光文社時代小説文庫)

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  • 作者: 岳 宏一郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/09/06
  • メディア: 文庫



群雲、関ヶ原へ〈下〉 (光文社時代小説文庫)

群雲、関ヶ原へ〈下〉 (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 岳 宏一郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/09/06
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コメント 2

半世紀少年

面白そう(^v^)
まるで、その場に居て家康の気持ちを聞いていたような・・・・。
by 半世紀少年 (2011-12-13 00:11) 

yan

半世紀少年さん、ありがとうございます。
面白いですよ。
ご一読お勧めします。
by yan (2011-12-15 22:44) 

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